百姓日記 帰農人

農園の長、アチが書く百姓日記

帰 農 人 2019 11/03 「水俣」は生きている

今夜は、寒くない。冷えてきたなと、毛布を巻きながら本を読んでいたが、丁度よく隣の家の解体が始まった。
解体屋のにいちゃんに「角材はみんなもらうよ、軽トラ置いておくから乗せといて」と、最初から話はつけておいた。
それを畑に運ぶこと4回、あと1回で終わりかな、ともかく乾燥しきっている材木の破片が庭先に山のようにある、うちの薪たちは雨に祟られ、しっかり水を吸っている。が、目の前に宝の山。
職人たちが帰った後、半分ぶっ壊されている家に、ヘッドライトに手袋をはめ、釘を踏みつけない様に適当な木材を集めまわる。
わずかな時間だが、ありがとうと至福の時間が過ごせ、勿論すぐにストーブは活躍し朝晩温めてくれること、ここ4、5日、ありがたやのヌクヌクの部屋。
いつもなら、焼酎とドブのお湯割りだが、二日続けてラグビー、正当な子どものケンカお手本を見入りながら、サーバーから何杯もサーバーからジョッキにビールを注いだ。

親族のような八百屋仲間「旬」の美鈴さんの百ヶ日の法要に一人芝居が上演された。
やおや旬のお宝「天神庵」に入ると、上がり框下駄箱の前に祭壇が作られ焼香ができるようになっていたが、線香用のろうそくに火が灯っていない。香取家は相変わらずバタバタだ。
農園のコンテナ二十個の上にコンパネを置き、布を被せた音響と音楽コーディネータの元での芝居は「天の魚(いを)」石牟礼道子「区海浄土」の中の一篇を、15年前まで上演していた砂田明の後をうけ、初老のベテラン俳優の川島 宏知が演じる。
爺ちゃんは、「水俣病」前の波の少ない水俣湾での貧乏でも心豊かな漁師の姿などを語り、家族がみな病気に掛かり、孫は産まれつき四枝はまともに動かせず寝たきりで話せないが、みなに迷惑を掛けない事を常に心がけている。
心を、神仏への祈りと共に孫に手を合わす。水俣は生きている。